メニューを飛ばして本文へ



マンション管理の役立ち情報

【大規模修繕】 テーマ別改修シリーズ「屋上防水 第1回歩行型」

大規模修繕に関する顧問研究員

石田 直之(いしだ なおゆき)

長年の経験と技術ノウハウを活かして、リニューアルや大規模修繕のご提案をします。



今回から、屋上防水を3回のテーマに分けて説明します。屋上防水の3種類、それぞれの特徴は次の通りです。

  1. 歩行型(陸屋根)
    屋根の使用目的としてだけではなく、設備機器の置場や屋上駐車場や屋上緑化・屋上庭園等の多岐の用途に用いられ歩行が可能です。
  2. 非歩行型(陸屋根)
    屋根の荷重をできるだけ避けたい目的で用いられ、屋根に諸設備を設けない条件ではありますが、配管を敷設する時には軽歩行用の補強材を用います。
  3. 勾配屋根
    意匠性と雨水が屋根に溜まらない目的で用いられます。屋根が勾配になっているため、屋根の色彩が外観から見えることにより建物全体のイメージアップになります。

(※一般的に屋根勾配(勾配50~100分の1)を陸屋根と称し、それ以上勾配のある傾斜のある屋根を勾配屋根と称されます。)

テーマ別改修シリーズ「屋上防水 第1回 歩行型(陸屋根)」

1.どんな程度の状況になると補修が必要になるの?

一般的に歩行型と考えられる防水仕様の多くは、アスファルト防水押えコンクリート仕上げが代表的なものと考えられます。この防水仕様の場合、コンクリートの下部に防水層が存在するため、直接防水層を見る事は不可能ですので、表面の押えコンクリートの劣化状況で推測する事となります。

●劣化現象のポイントは?

劣化状況を診断する場合の劣化現象のポイントは以下の通りです。

  • 漏水又はその痕跡
  • 押え層の破断、損傷(ひび割れ、浮き、欠損、反り)
  • パラペットの押出し
  • 端部の損傷(ひび割れ、シールの劣化)
  • 伸縮目地部の異常(とび出し、飛散、口空き)
  • 植物の繁殖
  

押えコンクリートの反り返りや突き上げ等は防水層に影響を及ぼす可能性があり、植物の生育は植物根が防水層を貫通し漏水に至る危険性がありますので、注意が必要です。
また、コンクリート表面に亀裂が生じたり欠損が生じていても、防水層が破断していることは少なく、漏水に繋がる事は少ないものです。
最近では立上り部が押えモルタルではなく露出アスファルト防水であったり、保護ボード板仕上げの場合もあります。立上り部が露出アスファルト防水の場合は直接防水層を確認できますので、その劣化状況によっては改修工事の必要性を検討することになります。

●耐用年数は?

改修を検討する際に参考となる耐用年数は、建物の立地条件や防水工法・仕様、気象条件等の諸条件によって相違が出てきますので、一様に工法毎に規定するのは困難ですが、ある程度の目安になると考えられます。(※耐用年数に関する参考指針参照)

最近ではアスファルト防水が改良された改質アスファルト防水や塩ビシートでは遮熱タイプのシート、ウレタン塗膜防水では通気絶縁工法などがありますので、この場合は一概に標準耐用年数があてはまるとは限りません。

※耐用年数に関する参考指針
防水層の寿命を検討する際の指針として、通称:総プロ(旧建設省が主体となって構成された総合技術開発プロジェクト)によって作成された「建築防水の耐久性向上技術」の中の「防水層の標準耐用年数」では、アスファルト防水押えコンクリート仕上げの場合は17年、露出アスファルト防水の場合は13年、シート防水(塩ビシート、ゴムシート)の場合は13年、ウレタン塗膜防水の場合は10年と示されています。

改修を実施する際は、劣化状況が部分的なものであって補修程度で対処できるものか、全体的な劣化で全面の防水改修工事が必要なのかは、現地の条件や状況、経年数によって変わりますので、専門家による劣化調査を行い判断することが望ましいでしょう。

2.改修にはどんな工法があるの?

改修の工法には、既存の押えコンクリートや防水層を全て撤去する「撤去工法」と既存の上から改修する「かぶせ工法」に大きく2種類に分かれます。

前者の「撤去工法」は費用、工期等がかかりますが新築時と同程度に戻すことが可能です。後者の「かぶせ工法」は既存の仕様、状況等により下地調整が変わりますが「撤去工法」と比較し一般的に費用、工期はかかりませんので昨今では「かぶせ工法」が多く採用されています。

  

3.どんな材料を使うのか?

「かぶせ工法」でアスファルト防水押えコンクリート仕上げの場合は、既存がコンクリートである事から各種の防水材料の選択が可能であり、露出防水であることと納まりの状況や使用状況等により防水材料の選択を行うことになります。

材料としては前述のアスファルト防水に軽歩行板を貼り付けた仕様や保護ブロック板で仕上げたもの、ウレタン塗膜防水、塩ビシート防水等各種材料があります。ただし、保護ブロック板(コンクリート製)以外は軽歩行用となります。

防水材料は上記のような材質による分類と、形状もしくは形態による分け方として定型材料・不定形材料との分類も出来ます。アスファルト防水に使うルーフィングや塩ビシートなどはシートタイプですので定型材料であり、ウレタン塗膜防水のように塗布し皮膜を形成するものを不定形材料と言います。 防水工事の場合、防水端末の処理(納まり)も防水材料の選択に大きく左右されます。押えコンクリート上にフェンス架台等があり、納まりの複雑さに対応する事が求められる場合は、不定形材料が適しているものと言えます。

不定形材料の場合は厚み管理が必要となりますが、上記のような押えコンクリート仕上げの歩行タイプでは軽歩行が可能なウレタン塗膜防水が採用されやすくなります。最近では、押えコンクリートに内包する水分によるフクレや挙動によるウレタン塗膜防水の破断が懸念されるため、コンクリート面に絶縁シートを複合させた「ウレタン塗膜防水通気絶縁工法」が多く採用されています。

4.改修上のポイント、留意点は?

改修工事の場合、防水端末(納まり)の問題、既存下地の問題、使用環境の問題等を多角的に考慮する事が必要です。例えば、非常に高価な防水仕様や仕上げ材料を選択したとしても納まりの検討や下地調整をきちんとせずに施工した場合、本来の目的である「漏水をさせない機能」が不十分となる場合があるからです。

また通常、重要部位(下部が居室である事が一般的)である場合、防水の保証は10年ですので10年を超える耐用年数を持ちうる材料、工法の選定が不可欠です。

  

5.工事実施時のポイントは?

防水工事施工時の条件としては、下記の場合は施工を避けます。

  1. 降雨・降雪日
  2. コンクリート面が十分乾燥していない時
  3. プライマー塗布の状態で降雨等が予想される時
  4. 防水施工後、5時間以内に降雨等が予想される時
  5. 気温が5℃以下の時
  6. 強風の時

屋上防水に関する用語集

  • パラペット
    陸屋根を持つ建物の屋上の外周部に設けられた低い立ち上がり部分のことで、上端には笠木がつく。
  • 防水層
    防水するための層で、アスファルト防水層・シート防水層・塗膜防水層がある。
  • 立上り部
    部材が水平面などから垂直上方へ上ってゆく壁等の部分。
  • 目地
    隣り合う両部材間の境界部分の名称、又はそこに充填される材料のこと。
  • 笠木
    建物の屋上のパラペット部頂部や庇の端の上部に取り付ける部材。防水層立ち上がり端部の保護や、パラペット頂部からの漏水を予防する。アルミ製のものが普及しているが、ステンレス製やタイル張りもある。
  • 陸屋根
    平坦な水平の屋根のこと。(ビルやマンションに用いられることが多い)

ページトップへ