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マンション管理の役立ち情報

【大規模修繕】 テーマ別改修シリーズ「屋上防水以外の防水」

大規模修繕に関する顧問研究員

石田 直之(いしだ なおゆき)

長年の経験と技術ノウハウを活かして、リニューアルや大規模修繕のご提案をします。


1.どのような部位が対象となるのでしょう?

防水が必要とされる部位について考えてみます。 なぜ「雨漏り事故」が起こるのか?防水はなぜ必要か?ということに着目すると、以下の3点が重なると「雨漏り事故」が発生するといえます。

  1. 水があること
  2. 水路(みずみち)があること
  3. 水を動かす力があること

以上の3点です。
①の点に関して言えば、降雨を速やかに建物の外に排出できれば問題ありません。
②の点に関しては、コンクリートにひび割れ等が発生しなければ良いということになります。
③については、風や重力が無ければ問題ありません。

上記の3点を解決する方法は現実的には大変なことです。建物の水平面で水が溜まらずに必ず流れるようにすることや、コンクリートやモルタルにひび割れが発生しないようにすることは、未だ決め手がありませんし、風や重力などということに関してはほとんどお手上げの状況です。
それでは、上記3点のうち①・②の点が解決されない部分をマンションの部位で探してみますと、そこが防水の必要な部分といえるのではないでしょうか。

2.それぞれの部位ごとの状況は?

集合住宅においては、屋上以外にも防水が施されている部分があります。大きく目に付くのはマンションのバルコニーと開放廊下や階段です。ともに床面の下に居室が無いため庇と同じような感覚で床面にコンクリートを打ち込み、防水モルタルで仕上げるのが一般的な施工法と仕上げ手法でした。防水モルタルで仕上げるのは、コンクリートの床面の精度が悪い場合に補修を兼ねて成型する必要があることと、雨がかかるためモルタルに樹脂を混ぜひび割れを軽減したい、という理由によるものと思います。
このような考え方で、1950年代以降バルコニーや開放廊下は施工されてきました。

第一の転機は、この施工方法が1980年代の改修工事において、60年や100年持つといわれたコンクリートにひび割れや鉄筋腐食(コンクリートの中性化によるもの)が起こっていることが表面化し、コンクリート躯体を雨水や空気中の炭酸ガスから保護する必要性が叫ばれ、バルコニーや開放廊下等に防水を施工することになってゆきました。
大々的に防水施工を採用したのは、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構・旧住宅都市整備公団)です。この日本で最大の大家さんは、賃貸物件で開放廊下の防水改修をウレタン防水(開放廊下は歩行可能でなければならないため、歩行用防水材が求められた)で行うこととし、瞬く間に開放廊下を防水することになってゆきます。その後、改修工事ではバルコニーや階段にも防水施工を行うようになりました。

第二の転機は、2000年に施行された「住宅の品質確保に関する促進法(品確法)」により住宅供給者は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」の瑕疵に関して10年間を義務付けられたことにより、新築物件でもバルコニーや開放廊下に防水を施工することが定着してきました。

【事例:バルコニー床】

施工前                ウレタン塗布            施工後



3.どんな状況になったら補修(防水工事)を実施するの?

補修の可否に関しては、個別の案件について状況が違ってくると思います。概ね屋上防水と同様に10年程度での専門的な調査を実施のうえ判断すべきかと思いますが、新築時に防水施工が行われてないものについては、第1回目の大規模修繕時に検討することが良いと思います。
新築時や改修工事で防水施工が行われている場合は、当該物件の立地による日射条件で劣化の程度が大きく変わってきます。日当たりの良い南側(バルコニー側)は劣化の進行が早く、北側(開放廊下側)は比較的進行が遅いという傾向があります。

4.改修工法は?

改修については、階段や廊下などの狭い場所が多いことや側溝部分があることにより、塗膜防水が適しているといえます。シート形状の防水工法で全てを納めるには難しいといえます。また、基本的に歩行部分となりますので、工法についても軽歩行に耐えられる工法や材料が必要です。

○現状で施工頻度が高いと思われる材料と工法

  1. 床面・立上り(巾木)・側溝部とも塗膜防水仕上げ。
    代表例・・・ウレタン塗膜防水。ケイ酸質系塗膜防水
  2. 床面…塩化ビニル系長尺シート 立上り(巾木)・側溝部…ウレタン塗膜防水仕上げ



塗膜防水材は反応硬化性の材料が多いため、バルコニーでは問題なく施工できても、通常の歩行部分である開放廊下では、施工時の歩行に関して制約が生じます。近年では床面に塩化ビニル系の長尺シートを施工しその他の部分はウレタン塗膜防水にて施工する工法が多くなっています。

【事例:階段】

     施工前                      施工後

                                   (長尺塩ビシート張り、側溝はウレタン防水)



5.どんな材料を使うの?

塗膜防水材料に関しては、屋上で使用する防水と同様の材料を用いて施工するため、専用の材料は見当たりません。塩化ビニル系長尺シートについては、マンション用などとしてマンションに適したデザインを施した材料が出てきています。

6.改修上のポイントは?

  • 施工時の注意
    施工の際には、歩行可能になる時間や歩行が制約を受ける時間を打合せ周知徹底することが肝要です。
  • 防水としての保証
    防水保証は施工後5年間が一般的なようです。5年保証といっても保証期間が経過して機能がなくなるものではなく、防水層の評価として5年程度ということです。10年以上はもつものです。
  • メンテナンス
    メンテナンスについても打合せが必要です。清掃を実施する担当部署とも連携し、使用する洗剤等の可否を確認してください。変色等の問題が生じることがあります。



●バルコニーや開放廊下の防水 Q&A

Q. バルコニーや開放廊下は外部だと思いますが、なぜ大規模修繕などの時に、より完全な防水が行われるように変わってきたのですか?
A. ご指摘のようにもともとは「外部」として考えられてきました。雨水の吹き込むバルコニーの中はぬれるのが当たり前で、吹き込んだ水を速やかに排水することだけが考えられてきました。排水勾配を確保することと、コンクリートへの水の浸透を避ける目的で防水モルタルがなされていました。ところが、キャンチレバー(片持ち梁)が多いバルコニーや開放廊下のスラブは経年とともに小さな亀裂が生じやすいのです。これがみず道になって下階の室内に漏水する事故がお多発しました。そのため、防水のやりかえが必要になるのです。

Q. それでは、防水モルタルをやりかえればいいのではないですか?
A. 防水モルタルを取り除いて新しく打ちなおすことは簡単なことではありません。工事の騒音・振動や生活の不便などいろいろ問題があります。既存の上に重ねて打つことも考えられますが、サッシュとの関係や荷重・厚みなど別の問題が起こります。そこでウレタンなどの塗膜防水が採用されるようになりました。当初は防水モルタルの更新の代役だったわけです。

Q. 長尺シートが用いられるようになったのは同じ理由からですか?
A. 塗膜防水は見た目の評判があまり良くはありません。そこで開放廊下では歩行音解消を兼ねて長尺シートが用いられるようになり、最近では美装性を兼ねてバルコニーにも取り入れられるようになりました。

Q. やはり高い品質と保証が求められているということですか?
A. それだけではありません、もともと物干しと避難通路がバルコニーの役目だったわけですが、生活スタイルや意識が変わってくると期待される役割に変化が出てきました。昔は雨が降れば洗濯物は取り入れられていたので、水が漏ってもあまり困らなかったのですが、いまでは、雨天でも困らないことが求められています。また、ガーデニングが盛んになると、下階に水を漏らす心配をせずに楽しめることが必要です。さらに最近ではテーブルを置いてアウトドアリビングとして楽しむ人も増えています。室内と同じ性能や意匠が求められています。防水性能だけでは満足されなくなりました。塗膜防水から長尺シートへ対策が変化したのもこのあたりの事情が働いています。バルコニーは「部屋の外」ではなく「外部の部屋」に、また裏庭から表庭に変化しています。

Q. 今後はどうなってくるのでしょうか?
A. 最近は逆梁を用いて大きく視界が開いたものや、居間と一体となった大きな内バルコニーを持つマンションが人気を呼んでいます。照明や水道も備え、床も人工芝やウッドデッキ、タイル張り、石張りのものが出てきました。これらが大規模修繕の時期にさしかかる頃には、防水の問題はさらに大変になってくると思われます。

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